京アニ事件で鑑定留置延長 1年前の精神状態探る難しさ

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 京都アニメーション第1スタジオ放火殺人事件で、殺人などの容疑で逮捕された青葉真司容疑者(42)の鑑定留置が9日、延長された。36人が死亡、33人が負傷した未曽有の放火殺人事件。もともと大規模な事件であれば関係資料は多く、鑑定結果をまとめるのに時間がかかるとされる。また、青葉容疑者自身も命にかかわるやけどを負っており、こうしたことが鑑定留置期間の延長に影響を与えたとの見方もある。

 起訴前に行われる鑑定留置では一般的に、本人との面接や心理テストのほか、脳波や血液検査などを行い、犯行当時の精神状態を調べ、精神科医が鑑定書にまとめる。鑑定を担当する医師がさらに時間を要すると判断した場合は、検察が裁判所に期間の延長を請求する。

 鑑定医は供述調書や防犯カメラ映像などの捜査資料に目を通した上で本人との面談を進めるが、千葉大の五十嵐禎人教授(司法精神医学)は「大事件であればあるほど資料が膨大な量になり、鑑定結果をまとめるのにも時間がかかる」と話す。

 青葉容疑者は逮捕直後の取り調べで容疑を認めており、今後の公判では、刑事責任能力が最大の争点になる。このため検察側はさらに時間をかけて慎重に鑑定を行う必要があると判断したもようだ。

 今回の事件の特性が影響したとの見方もある。甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「犯行当時である1年前の精神状態を探る難しさがあると思う。やけどの治療も続けていると時間がかからざるを得ないだろう」と話す。

 そのうえで「責任能力が認められれば、あり得る求刑は死刑だろう。それだけにしっかりとした鑑定結果を得なければならない」と指摘する。

 鑑定留置の期間は通常3カ月ほどだが、延長された例は少なくない。平成28年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件では、約5カ月実施。29年に神戸市で5人を死傷させたとされる男の場合は約8カ月を要した。今回の事件について、京都府警のある捜査幹部は「過去の殺人事件でも時間をかけて鑑定している。今回も延長は当然ではないか」と話した。

Posted by disability-support-info