<信州取材前線>精神障害者の雇用 事業主は環境整備を 配慮足りず、低い定着率/長野

引きこもり, 心の病, 経済産業省, 職場, 長野, 障がい者, 障害者, 雇用・就職

障害者雇用促進法に基づき、企業や自治体などは一定割合の障害者を雇用することが義務づけられている。今年4月、その割合が民間企業で従業員全体の2・0%から2・2%に引き上げられ、対象も身体・知的障害者だけでなく、精神障害者が加えられた。厚生労働省のまとめでは、2017年の精神障害者の就職件数は5年前の約2倍となるなど顕著な増加を見せており、事業主には受け入れ態勢の準備が求められている。

「感情ややる気は自分ではコントロール不可能なものだと考えて」。山ノ内町の旅館、「春蘭の宿さかえや」の湯本晴彦社長は精神障害を持つ人やその家族約10人を対象とした就職セミナーで講演を行った。さかえやでは30人の従業員のうち、精神障害者は3人。その他にも不登校・ひきこもりだった人など、多様な人が働いている。従業員は気持ちの浮き沈みを気にせず、客に1日1通手紙を書くなどのできることから取り組むよう呼びかけられる。

就労体験も受け入れており、最初は1日、次は1週間、1カ月と徐々に慣れてもらってから正規雇用するなど、ミスマッチをなくす工夫をしている。一人一人の違いを受け止め、生かす経営が評価され、16年度の経済産業省の新・ダイバーシティ経営企業100選に選ばれた。湯本社長は「受け入れ側が対応の仕方さえ学べば、いろいろな人と働いていける」と語る。

精神障害を抱える長野市の30代女性は講演を聴き、「ここまで理解が進んでいる企業は少ない」と話した。女性は以前、職場に精神的な不調を伝えると「もう来なくていい」と言われ、辞職した。現在は障害への理解を求め、一般向けの求人から障害者対象の求人に切り替えて求職中だ。

ハローワークでは、本人の希望があれば障害者対象の求人だけでなく、一般求人を精神障害者に紹介することも多い。人手不足で、障害のことを知った上ですぐに採用する会社も多いが、長野労働局は「受け入れ準備を整えないまま採用しても長く続かない」という。昨年も入社後に職場で悩みを相談できなかったり、企業側の配慮が足りなかったりして就職した精神障害者が辞める事例が目立った。精神障害者の就職1年後定着率は17年に49・3%と他の障害者の6~7割に比べて低い。

長野労働局は精神障害者が働きやすい環境を整えようと対策を進めている。昨年から開催している「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」はその一つだ。経営や人事に関わる人だけでなく、上司や同僚になりうる一般の従業員が、障害の特性や必要な配慮を学ぶことができる。要望があった企業に無料で行っており、昨年度12件に対し、今年度は9月末までで17件と増加している。担当者は「以前は就職件数が着目されていたが、本人にとっては定着しなければ意味がない。企業や就労移行支援センターなどと連携して支援していきたい」と話した。

ソース元/gooニュースより

Posted by disability-support-info