夏の甲子園 車いす客に欠ける配慮 当日券のみ、代理購入認めず…

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甲子園球場=西宮市甲子園町
甲子園球場=西宮市甲子園町

大阪桐蔭(北大阪)の春夏連覇で幕を閉じた今夏の全国高校野球選手権大会。総入場者数が史上初めて100万人を超す熱気に甲子園球場(西宮市)が包まれる中、車いす席のチケット販売方法に疑問の声が上がった。当日券しかない上、障害者本人が球場窓口に並ぶことが購入の条件。1人5枚まで買える一般当日券と違い、売ってもらえるのは並んだ人の分だけだ。障害者らから「あまりに理不尽」と抗議を受け、主催者側は改善の検討を始めた。

準決勝があった8月20日の朝5時。早くも猛暑の気配が漂う甲子園球場の大会本部窓口には既に3台の車いすが並んでいた。快進撃を続ける金足農(秋田)を応援するため地元から夜通し車に揺られてきた人や、前夜の最終電車で来て待っている人たちだった。

目的は、31席ある車いす席の中で4席しかない「中央特別席」のチケット。屋根付きで直射日光を避けられ、長時間の観戦でも疲労が少ないからだ。高校野球観戦の常連という車いすの男性は「夏の甲子園は、障害者にとって心身ともにハードルが高い」と嘆く。

開門時間は混雑状況で変わる。第1試合が午前10時開始のこの日、当日券の販売は同6時20分からとなった。20分ほど前、「まだ4席は埋まっていませんか」と駆け付けたのは、千葉県在住の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者、酒井倫央(ともひさ)さん(43)と付き添いの3人。酒井さんは前夜、大阪市のホテルに泊まり、未明の3時に起床したという。人工呼吸器を着け、体温調節も難しいため、暑さの中で何時間も並んだりする負担は非常に大きい。

付添人の一人は「『障害者手帳を持っていくから代理購入を認めて』と主催者側に何度も電話したが、『皆さん並んでいる』の一点張り。はっきり言って命懸けで、もっとやり方があるはずだ」と憤った。

酒井さんは、文字盤を目で追って「(観戦は)病気になってから初めて。17年ぶり。楽しみ」と伝える一方、「明日の決勝もこんな時間に来ないといけないのか」と戸惑いを見せた。

病気の影響で車いす生活を送る芦屋市議の長谷基弘さん(60)はこうした実態を知り、大会終了後に「公開質問状」を主催者側に送った。「主催者にはまず問題意識を持ってほしい。車いす利用者本人が並ばなくてもいい方法はいくらでもあるはず」と強調する。

主催する朝日新聞社の大阪本社代表室広報は「車いすを利用する本人の入場を確認するため、窓口販売を原則としてきた」と説明。その上で、来年夏の大会に向けて「前売り方式の導入や、障害者手帳の提示があれば付添者に当日券を販売するなど、改善策を検討する」としている。

【スタジアムのバリアフリー】 国土交通省は2015年、スタジアムや劇場の車いす席について、総客席数の0・5~1%を目安とするガイドラインを出した。甲子園球場の車いす席は31席で、総客席数に占める割合は0・06%。国内球場の車いす席は、マツダスタジアム(広島市、146席)や札幌ドーム(札幌市、117席)が多いが、それでも全体に占める割合はそれぞれ0・45%、0・28%にとどまっている。

ソース元/gooニュースより

Posted by disability-support-info