「65歳の壁」で負担がふえるという問題が?

65歳の壁

現在の福祉制度では、65歳以上の障害者は、自立支援給付(ホームヘルプなど)については原則として、障害福祉サービスよりも介護保険サービスを優先することが障害者総合支援法によって定められています。

ただし、たとえば行動に著しい困難がある知的または精神障害のある人を対象に、必要な援助を行う「行動援護」は、介護保険には相当するサービスがないために受けられなくなるなど、障害福祉の支援が制約されてしまいます。

そのため、厚生労働省は自治体に対して「一律に介護保険サービスを優先とはしない」と通知しています。介護保険制度の優先を原則としながらも、障害福祉の支援が適切な場合は自立支援給付を適用、もしくは両制度の併用が可能となるのが現在の制度設計です。
この通知を受けての対応ですが、自治体によって差があり、市区町村によって福祉や介護の選択や利用に格差が生じているという実態があり、大きな問題になっています。
具体的には、障害福祉の支援が打ち切られ、介護保険制度に切り替わったことで、居宅介護の回数が減らされたり、もともと介護保険制度の優先原則の対象ではない地域生活支援事業である移動支援まで支給を打ち切られたり、という事例もあったそうです。

もう1つ、こちらは制度そのものの問題です。障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合、基本的に介護保険サービスが優先されます。ところが、障害福祉サービスの場合は、一定の所得以下の人は自己負担額なしでサービスを受けられるのに対して、介護保険サービスは、所得にかかわらず1割負担になるのです。
具体的には、居宅介護や短期入所などは、障害福祉と介護保険の両方にあるサービスなので介護保険が優先です。これによって何が起きるかというと、所得が低い人は65歳まで自己負担ゼロで受けられていたサービスが、65歳になると1割の自己負担が生じてしまうのです。このような出費を抑えようとして、利用したいサービスを受けず、生活の質が落ちてしまうということが、実際に起きています。

国は行政に対する事務連絡で、こういった場合には配慮するように促す姿勢を見せていますが、行政側ではこのような配慮はあまり行われていないのが実情のようです。
ただし、2016年3月に閣議決定された障害者総合支援法改正案で、低所得の高齢者に限り、自己負担を減らすという内容が盛り込まれました。

現場でどう運用されていくかはこれからですが、高齢障害者の生活安定という意味では、一歩前進ですね。


Posted by disability-support-info